先日、50代の男性から「父から相続した実家を売りたいのですが、まだ住宅ローンが残っているんです。こういう場合はどうすればいいのでしょうか」というご相談をいただきました。実は住宅ローンの残債がある不動産でも、適切な手順を踏めば売却は十分に可能です。ただし、抵当権の問題や資金計画など、押さえておくべきポイントがいくつかあります。
相続した実家に住宅ローンが残っているケースは珍しくありません。親御さんが晩年にリフォームローンを組んでいたり、住み替えで購入した物件だったりと、さまざまな事情があります。業界経験25年の現場で多くの事例に携わってきた立場から、住宅ローン残債がある不動産の売却について、具体的な手順と注意点をお伝えします。
今回は、残債の確認方法から売却の実務、任意売却が必要になるケースまで、実例を交えながら詳しく解説していきます。
住宅ローン残債があっても売却できる理由
住宅ローンが残っている不動産には、金融機関による抵当権が設定されています。抵当権とは、ローンが返済されない場合に金融機関が物件を差し押さえる権利のことです。不動産を売却する際には、この抵当権を抹消する必要があります。
しかし抵当権の抹消は「ローンを完済してから」が原則です。つまり、売却代金でローンを完済できれば、残債があっても売却は可能ということになります。実際には売却決済時に、売却代金から残債を一括返済し、同時に抵当権を抹消する手続きを行います。
たとえば、住宅ローン残債が1,500万円ある物件を2,000万円で売却できれば、決済時に1,500万円を金融機関に返済し、抵当権を抹消します。残った500万円が売主の手元に残る計算です。このように売却価格が残債を上回る状態を「アンダーローン」と呼びます。
まず確認すべき残債と査定額のバランス
売却を検討する際に最初に行うべきは、現在の住宅ローン残債の正確な把握です。金融機関から毎年送られてくる残高証明書や、インターネットバンキングで確認できます。相続した物件の場合は、金融機関に問い合わせて残債額を確認しましょう。
次に重要なのが物件の査定価格です。査定額が残債を上回っていれば、売却によってローンを完済できます。逆に査定額が残債を下回る状態を「オーバーローン」と呼び、この場合は不足分を自己資金で補填するか、任意売却を検討する必要があります。
私が担当した事例では、相続した築30年の一戸建てで残債が800万円あり、当初は「売れないのでは」と心配されていました。しかし査定の結果、立地条件が良好で1,200万円の評価となり、無事に売却して残債を完済し、相続人の間で残金を分配できました。まずは現状把握が第一歩です。
売却代金で完済できる場合の手順
査定額が残債を上回るアンダーローンの場合、売却手順は比較的スムーズです。まず不動産会社と媒介契約を結び、販売活動を開始します。買主が見つかったら売買契約を締結し、契約時に手付金を受け取ります。
決済日までに金融機関へ連絡し、抵当権抹消の準備を依頼します。この際、完済予定日や抹消書類の準備について確認しておくことが重要です。金融機関によっては書類準備に1週間程度かかる場合もあります。
決済当日は、買主から売却代金を受け取り、その場で金融機関へローン残債を一括返済します。返済と同時に司法書士が抵当権抹消登記の手続きを行い、買主への所有権移転登記も同時に進めます。すべての手続きが完了すれば、残った売却代金が売主の手元に入ります。
この一連の流れは、経験豊富な不動産会社と司法書士がサポートすることで、売主の負担を最小限に抑えられます。決済時には金融機関の担当者も同席するケースが多く、その場で全ての手続きを完了させる段取りが一般的です。
売却代金で完済できない場合の対処法
査定額が残債を下回るオーバーローンの場合、不足分を自己資金で補填するのが基本です。たとえば残債1,800万円に対して売却価格が1,500万円なら、300万円を自己資金で用意して完済し、抵当権を抹消します。
自己資金が用意できない場合は、任意売却という方法があります。任意売却とは、金融機関の同意を得て、ローン残債を下回る価格でも売却を認めてもらう手続きです。売却後も残る債務については、金融機関と返済計画を協議します。
私が関わったケースでは、相続した物件の残債が2,000万円あり、査定額は1,600万円でした。相続人には自己資金がなく、最初は途方に暮れていましたが、金融機関と交渉して任意売却を承認してもらいました。売却後の残債400万円については、月5万円の分割返済で合意し、相続人の生活を圧迫しない形で解決できました。
相続物件で団信がある場合の特例
相続した物件の住宅ローンに団体信用生命保険(団信)が付いている場合、被相続人の死亡によってローンが完済される仕組みがあります。団信に加入していれば、相続人がローンを引き継ぐ必要はありません。
ただし団信の適用には金融機関への死亡届と保険金請求が必要です。この手続きを怠ると、ローンが残ったままになってしまいます。相続発生後は速やかに金融機関に連絡し、団信の有無と手続き方法を確認しましょう。
一方、団信に加入していなかった場合や、リフォームローンなど団信対象外の借入がある場合は、相続人がローンを引き継ぐか、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄をすれば借金も引き継ぎませんが、他の財産も相続できなくなるため、総合的な判断が求められます。
私が対応した事例では、団信に加入していたため相続後すぐに保険金でローンが完済され、抵当権も抹消されました。その後スムーズに売却活動を進め、相続開始から6か月で売却を完了できました。団信の有無は早期に確認することをおすすめします。
専門家に相談するメリットと選び方
住宅ローン残債がある不動産の売却は、法律・金融・不動産の知識が総合的に必要です。抵当権の抹消手続きや金融機関との交渉、任意売却の判断など、専門的な領域が多いため、経験豊富な専門家のサポートが不可欠です。
不動産会社を選ぶ際は、残債のある物件や相続案件の実績が豊富かどうかを確認しましょう。また、司法書士や金融機関とのネットワークがあるかも重要なポイントです。ホームクエストでは、代表が建物診断から資金計画、売却手続きまで一貫してサポートできる体制を整えています。
特に相続物件の場合、相続人が複数いると意見調整が必要になります。誰がローンを引き継ぐのか、売却代金をどう分配するのか、といった問題を円滑に進めるには、中立的な立場でアドバイスできる専門家の存在が重要です。売却価格の設定から販売戦略、決済までの段取りまで、トータルでサポートを受けることで、安心して手続きを進められます。
まとめ|住宅ローン残債があっても適切な手順で売却可能
住宅ローンの残債がある不動産でも、売却価格が残債を上回れば通常の売却手続きで対応できます。まず残債額と査定価格を正確に把握し、アンダーローンかオーバーローンかを確認することが第一歩です。
アンダーローンなら決済時に売却代金で完済し、抵当権を抹消します。オーバーローンの場合は自己資金の補填か、金融機関との交渉による任意売却を検討します。相続物件で団信がある場合は、保険金でローンが完済される可能性があるため、必ず確認しましょう。
いずれのケースも、法律・金融・不動産の専門知識が必要です。一人で悩まず、実績のある専門家に早めに相談することで、最適な解決策が見つかります。住宅ローン残債のある不動産売却でお困りの際は、ぜひ専門家のサポートを活用してください。
ホームクエストでは、相続・空き家・空き地・農地のご相談を承っています。経験豊富な代表が、最初から最後までご一緒します。
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